針穴写真に出会うまで。

遠藤志岐子(えんどうしきこ)
1967年1月2日生まれ・・・・干支が替わるのは節分らしいので片足羊に突っ込んだ丙午。
2001年ごろから針穴写真(またはピンホール写真)を撮り始める。


きっかけは友人との会話。
「石川賢治さんの『月光浴』って好きな写真だな~」
「どこが好きなの?」
「あの波が白く泡みたいになってるところ」
「自分でもやればいいじゃん」
「でも、レンズとかよく分かんないし」
「長時間露光すればあんな感じになるよ」
「意味、分かんないし」
「簡単にやるなら、ピンホールかな」
「ピンホール???」

友人が良かったのは、それ以上説明をしてくれなかったところ。
気になった私は図書館で(当時はネットはそれほどメジャーじゃなかったので)調べた。
でも、空き缶に穴を開けて、印画紙とかいう紙を自分で現像をしなくちゃならないらしい。
うーん、気になるけど、無理かなぁ。
と、忘れかけたころにその友人が

「ポラロイドからピンホールカメラのキットが出てるよ」

ふーんと思ったけど、特に探さなかったのに
偶然、通りかかった有楽町のビックカメラのカメラ売り場で見つけた!
セピアのが撮れるキットがあって、それにした。
いまでも、何故これをこの時に買う気になったのかはさっぱりわからない。
なんだか導かれるように手に取り、レジに向かっていた。

いつもなら買ってきてもしばらく放置・・・なのだが、買ってきたその日に組み立てた。
翌日、近所の橋の上で撮ってみた。
セピアをチョイスした。
その一枚目を見た瞬間、本当にストン、と恋に落ちた気分だった。
別に撮れた写真が良かったとかすごかったわけじゃなく、
自分の中の欠けている一部にピチッとしたパーツがカチンと音を立てて
はまり込んでしまったような、そんな感覚。

それからは信じられないような早起きをしたりして、ポラロイドをガンガン消費していく。


秋口に札幌と小樽に旅行に行った時も抱えていき、
雨女を発揮してずっと雨、または初雪状態の中で外箱がぐだぐだになった。


そのうち、ポラロイドの独特の色がなんとなく嫌になり、
このでかさが嫌になり、紙箱なので雨に弱いことが嫌になり、
引き伸ばしたり、何枚もプリントできないことが嫌になり、
なんとかできないものかと、またいろいろ調べ始めた。


まず最初に、プラモデルカメラを購入。
単純にレンズの部分にピンホールをつければいいんじゃない?というレベルで改造。
35mmのフィルムに写っていたのは、真っ黒なコマの中心に丸い画像のみ。
意味が全く分からない(苦笑)。
ピンホールが小さいのか?・・・不正解!
ピンホールを開けている時間が短いの?・・・不正解!
さっぱり原因がわからない。


この時、フィルムを現像してくれた写真屋さん「ワタベカメラ」のご兄弟が
現像を見て「これ、なにやったの?」と聞いてくれたんだけど
その時は特に会話もせず帰ってきてた。
でも何となく気になったので、その現像を持って「これ、何でしょう?」と質問した。
ワタベカメラ兄に「カメラ、見せて」と言われ
プラモデルカメラを差し出して、「実は、ピンホールに改造したんだけど」と説明をした。
あっさりと「絞りがあるから絞りのサイズしか写らないんだよね」と言われた。
今なら「あっさりと言われた」とわかるのだけど、その時は「絞り・・・???」ですよ。
私の疑問だらけの顔を見たワタベカメラ兄が「分解してもいい?」というので手渡す。
レンズとシャッターの説明をしつつ、絞りについても教えてもらい、
「というわけで、この丸いのは絞りの大きさなんだよね」と結果がすっきり。
その先、どう改造するかは、私次第になった。


この時に初めて絞りというのが存在すると知り、
もっと簡単に改造できるものはないかと調べ始めた。
軽くて、できたらプラスチックで、普通に売ってるフィルムが使えて、改造が簡単で、と探すと
ホルガにたどり着いた。
ようやく個人がHPをなんとか作って公開をし始めたころだった。
偶然、そのホルガをピンホールに改造しているHPを見つけた。
ホルガを買いにアオヤマブックセンターに行った。
買ってきてすぐに開けて、いきなりレンズを切り外した。
すごく簡単だった。
初めて自分で作ったピンホールをつけてみた。
(プラモデルのはポラロイドのキットに予備でついていたのを使ってた)

しかし、ブローニというフィルムをどうやってセットすればいいのかわからない。
こんなフィルム、見たことがない。
悩んで、結局またワタベカメラへ。
針穴カメラになったホルガを見て、ワタベカメラさんたちは「おもしろい、おもしろい」と喜んでくれた。
フィルムをセットしてもらって、ワタベカメラ周辺で試し撮り。
露光時間は適当。しかも雨が降っていた。
とりあえず、写るか写らないかだけでもいいから知りたかった。
6x6で撮ったので12枚撮りきってワタベカメラに現像に出す。
その日中には出来上がってるので夕方まで仕事した。


同時プリントされた、初めて見る正方形の写真。
雨降りの木々のある公園と木のベンチと紫陽花が、写っていた。
そのなんともいえない佇まいと風合いを見て、本気の恋に落ちたと思った。


何枚かは露光時間不足で真っ暗だったり、逆に過多で真っ白だったりしたので
ワタベカメラさんに「もったいなくても自分で思った露光時間の半分と倍の合計3枚を撮る」
と教わった。
「それを積み重ねていくことで、適正な露光時間がわかるようになるから」とも言われた。
露光時間の考え方、倍々で計算することも初めて知った。


その針穴カメラになったホルガは、今の「はりほるちゃん」である。
三脚穴をつけたり、スライドシャッターにしたりはしたが、基本は最初のまんま。
針穴もその時に作った最初のひとつ目だ。
このカメラを今でも一番信用している。
by hariana_no_kokoro | 2001-01-10 14:05 | プロフィール | Trackback | Comments(0)

針穴写真(ピンホール写真)を綴ります


by しきはん
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