針穴写真と出会ってから。



HOLGAの針穴改造がうまくいったので、これとポラロイドを抱えてハワイへ。

単純に友達との旅行だったのだが、どうしてもハワイで撮ってみたかった。

HOLGAは試し撮りを1本しただけで持っていったので恐る恐る使い、

メインはポラロイドだった。

帰って来て、ワタベカメラさんに現像を出したらハワイと針穴写真って相性がいいんだと思った。

その中の一枚、ホテルの部屋のテラスから朝になったばかりの空と海を撮ったものが

自分ではものすごく気にいった。

どうしても誰かに見てもらいたいと思い、本屋へ行った。

その時、なんでそう思ったのかはわからないのだけど、

とにかく何かカメラ雑誌に投稿してみようと思ったからだった。

カメラ雑誌というと、アサヒカメラと日本カメラしか知らない私はその2つを手に取ってみた。

どちらも「月例コンテスト」というのがあって、毎月募集していた。

たまたまアサヒカメラの締め切りが近かったので、アサヒカメラを購入し

ワタベカメラさんに持ち込んだ。

ワタベカメラさんは応募の規定を読んで、それに合うようにプリントしてくれた。

裏にはる応募票の書き方や貼り方も教えてくれて、「楽しみだな」と言ってくれた。



それから数週間後、家に1通の往復はがきが届いた。

アサヒカメラからだった。

ハワイの針穴写真が、ファーストステップ部門に入選した連絡だった。

びっくりした!

カメラのことも、写真のことも、アサヒカメラがどういう性質の雑誌なのか、

月例コンテストがどういうものなのか、とにかく全く何の知識もなかった。

たんに、誰かに見てもらいたいという気持ちしかなかった。

初めての写真で、しかも針穴写真で、自分が作った針穴で撮った写真が、

初めての投稿で入選した!

往復はがきには、詳しいカメラの情報や、選者に質問などを書く欄があって

丁寧に書いて投函した。



ワタベカメラさんに報告したら「すごいな、すごいな」と喜んでくれた。

そして、月例コンテストには毎月応募することが大事だと教えてくれた。

毎月応募しようと思う、自分で思える写真を撮り続けること、

それが上達にも繋がるし、意識の変化にも繋がると、教えてくれた。



なので、それからはとにかく撮った。撮りまくった。

そして、現像をワタベカメラさんに出し、たくさんのダメだしをもらい、

構図のこと、露光時間のこと、ものの見方、正方形の考え方、

自分が好きなものと、コンテストに向いているものなど、

とにかくたくさん話を聞いて、教えてもらって、

毎月アサヒカメラのファーストステップに投稿した。

何度も入選や特選をもらった。

選者の言葉がものすごく励みになった。

その年、ファーストステップの修了証をもらい、展示された。

それが写真を展示した、最初のことだった。




翌年は、組写真に応募した。

特選、入選を何度かした。

ワタベカメラさんには、組写真の考え方や組方などをみっちり教わった。

露出計を買ったのもワタベカメラさんのおすすめだった。

卸の価格で売ってくれた。

使い方も教わった。


このころから、ワタベカメラさんに出入りする常連の人たちとも

たくさん話をして、いろんなことを教わった。

皆さん、ベテランばかりなのに、何も知らない私をバカにもせず

針穴写真を純粋に楽しんでくれていた。

その中に、私にモノクロの現像とプリントと引き伸ばしを教えてくれている

栗原さんもいた。

栗原さんには、モノクロとカラーの考え方の違いや、構図、発見する力などを

いろんな場面で教わった。

今でも、一緒に撮影旅行に出かけている。


アサヒカメラで入選を繰り返したことで、針穴写真の第一人者、田所美恵子さんから

メールをいただいた。

田所さんと言ったら、あこがれの方で、その方から突然メールが来て

針穴写真を撮っている人との食事会があるから、来ないか?と誘われた。

そこに出かけて、生まれて初めて自分以外に針穴写真を撮っている人と

現実に出会うことができた。

その人たちとは、日本針穴写真協会を作った。


マックユーザーの私はMac Peopleという雑誌を毎月読んでいた。

そこに、yukiさんが執筆した海外の写真共有サイトFotologの使い方があった。

IDの撮り方から、写真のアップ、交流の仕方までを日本語で解説してあった。

それを見て、Fotologに登録してみた。

Up出来るものは、針穴写真しかない。

少しずつ、コメントが付き、世界中に窓が開いていくのを実感した。

世界のあちこちで針穴写真をやっている人と繋がっていった。

いろんなことを教わった。

日本の写真をやっている人たちと、仲良くなった。

彼らはたくさんの刺激と新しい感覚を私に教えてくれた。

その人たちとは、今も繋がっている。

FotologからFlickrに乗り換えたけれど、

あの時、Mac Peopleに記事がなかったら、写真で世界と繋がるなんて

想像もできなかった。




偶然から出会ったポラロイドのキット。

それを教えてくれた友人。

偶然見つけたHOLGAの改造のHP。

全くの偶然、飛び込んだワタベカメラさんとの出会い。

ワタベカメラさんで知り合った、多くの人。

針穴写真を取り上げてくれたアサヒカメラ。

アサヒカメラを見て連絡をくれた、田所さん。

Mac Peopleの記事。


いろんな偶然が転がるように次々と目の前に現れて、導かれた。

あっという間の月日だった。

気が付いたら、もう針穴写真と自分は切っても切れないことになっている。

今も、いつも、針穴写真のいろんな可能性に挑戦したいと考え、向き合っている。

大切なもので、大事なもの。

針穴写真を撮っていない自分など、想像もできない。

ここまで来たのは、本当に多くの人との出会いと、助けと、繋がりがあってこそ。

ひとつずつ、ひとりずつ、すべてを大事にしていきたい。

ありがとう、と伝えたい。

その中でも、ワタベカメラさんとの出会いがなければ、今の私はいなかった。

感謝してもしきれない、大切な人たちです。
by hariana_no_kokoro | 2001-01-09 14:59 | プロフィール | Trackback | Comments(0)

針穴写真(ピンホール写真)を綴ります


by しきはん
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