調布文化会館たづくりでの展示
「ピンホール写真展〜やわらかな光、ゆるやかな時間」。
長〜いと思っていた展示期間も無事に終わりました。
たくさんの方にご来場いただき、ありがとうございました。
今日は、展示を振り返ってみます。
今回のグループ展は、企画会社があり、そこから声をかけていただきました。
レビンソンさんも大木さんももう長く存じ上げておりますが
ご一緒するのは、初めてでした。
でも、グループ展というよりも、それぞれ個展って感じで
一度に3人の個展を見るという展示でした。
3人それぞれのアプローチで、楽しんでいただけたかと思います。
今回、私は壁面が4枚とのことで、壁ごとに組写真にしました。
「夕暮れにひとり」「蒼い影」「硝子越しに」「針鉄の旅」です。
「夕暮れにひとり」は、空が夕焼けに染まらなくても
夕暮れ時に撮ったものでまとめました。
夕暮れ時に針穴するのが、とても好きです。
露光時間が長くなるので、予期せぬ画ができあがります。
針穴写真の好きなところで、長時間露光があります。
夕暮れ時はそれを思いっきり堪能できますね。
そん中の一枚。
ほるちゃん/FujiChrome Velvia ISO50/16分ぐらい
これは、今年の1月にアメリカ西海岸アナハイムのディズニーランドの入口で撮りました。ディズニーランドには入ってません。三脚を立ててじっとしているので警備員に「何してんだ?」と不審者扱いされましたよ。
もう一枚。
ほるちゃん/FujiChrome Velvia ISO50/16分ぐらい
これも、今年の1月に入ったアメリカ西海岸のハンティントンビーチ。この日は、太陽が沈む前は金色に輝いていたのに水平線近くに分厚い雲が出てきて、予想外に綺麗な空にならなかった。で、撤収しようと思った時に、自分の手が赤くなってて、空を見上げたらなんとも言えない色に。慌ててもう一度三脚を立てて撮りました。16分間の空の変化を一枚に流し込め、実際の空よりもドラマチックに撮れたと思います。
この壁面は、マットを黒色で、切り口も黒にしました。額縁も黒です。
写真を展示する時に、黒マットで切り口黒は、難しいとか、珍しいとか言われますが私は、好きです。実際、よく使います。特に、針穴写真は周辺光量が落ちているので、写真からマットと額縁が延長線に繋がるように感じられます。さらに、今回は、夕暮れなので、普通よりも周辺光量落ちが激しく周辺が黒くなりがちなので、マットの黒と繋がりやすかったと思います。それと、マットを黒にすることで、針穴カメラの内部を想像してもらえたらと思ってこの展示方法を選びました。
「蒼い影」。この壁面は、サイアノタイププリントで展示しました。なので、データにしてないので、ここに表示できません。今回展示したサイアノタイププリントは、フィルム原版でプリントしたものと、デジタルピンホールで撮影し、ピクトリコのネガシートにプリントしてからサイアノタイププリントをしたものとを混在させました。
私は、デジタルも否定しません。デジタルならではの使い方もしていきたいと考えています。でも、ただデジタルで撮るだけじゃつまらないなと思うので、あえて、古典的な技法であるサイアノタイププリントで仕上げました。
「硝子越しに」は、窓からの風景や、窓そのもの、窓が印象的な場所などでまとめました。
その中の一枚。
ほるちゃん/FujiChrome Velvia ISO50/2分ぐらい
これは、山形の旧県庁舎。
窓から見える煉瓦造りの建物と、窓にかかるレースのカーテンを撮りました。
もう一枚。
ほるちゃん/FujiChrome Velvia ISO50/1分ぐらい
これは、今年の1月に行ったアメリカ西海岸、マリーナデルレイ近くのホテルの窓から。別にどうってことない普通の窓だけど、隣の酒屋の看板と椰子の木が窓から見えたので。
針穴写真の特徴の一つに、パンフォーカスがあります。手前も奥も同じように写る。それを利用して、窓も窓枠も窓周りも窓の向こうの景色も撮ります。いつも、その窓辺に佇んでいる、そういう空気感や質感を大切に撮るようにしています。
「針鉄の旅」。針穴写真で鉄道の旅情を撮るとか、針穴カメラを持って鉄道の旅に出ようとかそういう意味での造語です。少しずつ鉄道の旅をして、その先々で鉄道に乗って旅をしたいなと感じてもらえるようなものを目指して撮ってます。中でも今回は、走っている車両からのものでまとめました。
ほるちゃん/FujiChrome Velvia ISO50/20秒くらい
鉄道の旅に出ると、乗った路線の先頭か後ろでこれをやります。のんびりしたスピードでも針穴で撮るとすごい疾走感。それと乗っている感がよく出るので、好きです。
もう一枚。
ほるちゃん/FujiChrome Velvia ISO50/20秒くらい
これは、赤い鉄橋を通過中に撮ってます。なので、赤い筋のようなものが写っているのです。
さらにもう一枚。
ほるちゃん/FujiChrome タングステン/1分ぐらい
これは、雨のゆりかもめ。しかも、レインボーブリッジの下を通過中です。
針穴写真の苦手なところに、動きがあります。動いているものはうまく写らない。でも、それはデメリットでもあるけど、同時にすごいメリットにもなるのです。例えば、風で揺れる木々、歩く人、船からの景色、などなど。
針穴写真の苦手なところをあえて使って、針穴写真でしかできない表現を考える。そういうことも考えて撮ってます。
今回の展示で、私の中で撮りためている幾つかのアプローチを少しまとまった形でお見せすることができました。また、針穴写真でできることの可能性や多様性も提案できたらいいなと考えて、これらのテーマを選びました。長時間露光、パンフォーカス、動き、プリント方法。針穴写真という道具を使って、どう表現するか、何を伝えたいか、その辺りも感じてもらえたらいいなと思っています。
それと、実は今回はそれぞれの組写真の中に、人影を入れています。4つの壁面に共通して、人の気配を感じさせる、を密かに表現してました。裏テーマって感じですね。
以前から私の展示を見ていてくれてる方には、今回、何かが違うと言われることが多かったです。それは多分、人という存在だと思います。
いつもの海辺に人を一人立たせるだけで、今まで私が撮ってきた海辺とはほんの少し違ったニュアンスを紛れさせることができたと思ってます。全部に入れるつもりはないけれど、数枚に主役ではない人を入れることで、より印象に残ったらいいなと考えて写真を選びました。
一人でも多くの人の中に針穴写真が残るといいな、一人でもやってみたいな、と思ってくれるといいな、実際にはじめてみたって人が増えるといいな、と思ってます。
今回の展示場所は、市役所や図書館に来た人がついでにふらっと立ち寄ってくれることも多く普段は写真を見ない人、全く撮らない人とお話しすることもあり私も新鮮でした。写真ギャラリーでやるのとはまた違って、楽しかったです。
ありがとうございました。